少し前は、定期付終身保険に加入し定期保険特約の更新時を迎えると、必ずといってよいほど営業職員は契約転換をすすめました。しかし、難解なしくみのため誤解が生じ、トラブルが多発しましたが、その原因に迫ってみましょう。
契約転換制度のしくみ
契約転換制度とは、既契約の転換価格(契約返戻金や積立配当金など)を、新たに加入する保険の保険料の一部に充当し、既契約から新規契約に乗り換えるもの。つまり、生命保険の下取りです。
定期付終身保険の転換では、保障額は大型化したものの終身保険が減額されたなどのトラブルが見受けられます。
【トラブル例】
・定期付終身保険を増額、保険料はほぼ同額、しかし終身保険が大幅に減額された
・払込期間が延長された、定期特約が更新型になっていた、など
「解約返戻金を老後の資金に」と考える契約者は少なくありません。多少保障額が増えても、解約返戻金のもとになる終身保険が減額されれば、意味がありません。しかも、転換後の予定利率が低ければなおさらです。
生命保険では、保障額が同じでも予定利率が高ければ保険料は安くなります。契約転換の場合、保険料は現在の予定利率が適用されますが、最近の改定はいずれも予定利率の引き下げのため、契約の転換は予定利率の低下を招きます。
つまり、契約者にとって有利な契約から不利な契約への変更です。契約者が後でこれに気づき、トラブルとなるのです。すなわちトラブルの原因は、しくみについて、営業職員の説明不足や契約者の理解不足などということでしょう。
転換は、保険会社の逆ザヤ問題解消のためではとの懸念もあり、「安心を売る生保が不安の元になるようではいただけない」(B紙社説)との指摘もありました。
トラブル防止策の策定
契約転換のトラブル防止のため、金融監督庁(現金融庁)は、2000年5月、保険業法施行規則を改正しました。これには、転換契約締結の際、転換前後の保険金額、保険料、保険料の支払期間、その他の重要事項を書面で比較し、説明することなどが盛り込まれました。
一方、同年8年、金融庁はA社について、「転換契約の際の契約者の保険料負担について、保険契約者に誤解を与えかねない説明により、募集行為を行った」などの行為が確認されたとして、行政処分を行いました。
転換には、次の3種類がある
基本転換・・・転換価格を終身保険のみに充当する方式。終身保険の保険料だけが軽減。
定特転換・・・転換価格を定期保険特約のみに充当する方式。保険料負担が軽減されるのは定期保険特約のみ。また、特約更新時の保険料負担は軽減されない。
比例転換・・・転換価格を一定の割合で分割し、終身保険と定期保険特約のそれぞれに充当する方式。終身保険、定期保険特約それぞれについて、保険料負担が軽減される。特約更新時の保険料負担が軽減されるのは終身保険のみ。