保険金請求権も債権の一種ですから、譲渡、担保設定あるいは差し押さえが可能です。また、解約返戻金も差し押さえが可能です。
少し難しい問題ですが、具体的に保険金請求権の差し押さえについて見てみましょう。
保険金請求権は債権の一種
私は、友人に1,000万円を貸しておりますが、催促してもなかなか返してくれません。つい最近その友人が生命保険の受取人になったことを知りました。借用証書は公正証書にしておりますので、友人の保険金請求権を差し押さえたいと思っております。可能でしょうか。
保険事故の発生前後を区別して考えてみましょう。
保険事故発生後:
死亡保険では被保険者が死亡しますと、保険金受取人の保険金請求権が確定的なものになります。保険金請求権は具体的な金銭債権となり、通常の債権と同じことになります。
保険事故発生以前
・受取人が保険契約者の場合:
保険契約者の解約返戻金請求権を差し押さえて、保険契約を解約することも可能です。なお、保険契約者と被保険者が違う場合には、差し押さえ後に保険金受取の権利を移転する裁判所の転付命令を受ける場合には、その被保険者の同意が必要となります。
・受取人が保険契約者以外の場合:
通常、保険約款では保険契約者の受取人の変更、保険契約者の解約権が自由に認められています。したがって、この場合に差し押さえを認める実益はほとんどありません。
実務上は、保険事故発生以前に解約返戻金請求権を差し押さえ、保険契約を解約して解約返戻金の支払いを受ける方法がよく行われます。
金銭債権の差し押さえの手続き
債権とは、ある人がほかの人に対して、一定の行為や給付を求めることを内容とする権利を意味します。
判決や公正証書に基づいて、裁判所に差し押さえを申し立てます。裁判所から差し押さえ命令が出されると、相手方は、金銭債権を自由に処分することができなくなります。