生命保険加入時に渡される保険のしおりに保険約款が記載されています。ところが、保険約款は文字が細かく、言葉もわかりにくいのでつい読まないままになっています。しかし、保険約款は保険の条件、内容を決定する極めて重要なものなのです。
生命保険の保険約款とは
生命保険は保険会社と加入者との間の合意によって成立する契約であり、生命保険の種類ごとの契約条件、内容を定めたものが保険約款です。保険会社が金融庁長官の認可を受けて作成したもので、加入する際、加入者に渡されます。
○保険約款ではどんなことが定められているか
保険法には生命保険の規定がありますが、保険約款で法律の定めを拡張したり、限定したりすることは法律の定めの趣旨に反しない限り認められます。
保険約款の内容
・保険会社の責任開始期日
・保険金の支払い
・保険契約の無効および解除
・保険料の払込み
・配当
・保険契約の解約および払戻金
・保険契約の内容の変更
・契約者に対する貸し付け
○読んでいないからといって知らないとはいえない保険約款
一般に契約は当事者が合意した内容に限って拘束力が生じますが、保険契約は読んでいなくても拘束されてしまいます。
保険契約は大勢の人との間に結ばれるものですので、保険契約の条件、内容をいちいち個別的に決めることは事実上できませんし、一般の人々が保険会社を相手に交渉することも困難だからです。
CASE1
Aさんは、2年半前に死んだご主人の遺品を整理していたところ、Aさんを受取人としたご主人の保険証券がでてきました。Aさんは法律を学んでいましたので、商法に保険金請求権は2年で消滅時効にかかり請求できなくなるという定めがあるのを知っていました。そのため、請求することを諦めてしまいました。
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平成22年3月31日までに締結した生命保険契約の保険約款では、保険金請求権の消滅時効を3年に延期していました。したがって、Aさんは3年以内であれば保険金を請求できたのです(現在の保険法では、消滅時効を3年と規定しています)。ですので、ご自分で判断されるのではなく保険窓口やファイナンシャルプランナーなどにご相談されることをおすすめします。
CASE2
○○に住んでいるAさんは、保険外務員が地震でも大丈夫というので奥さんを受取人にして災害特約付生命保険に加入しました。ところが、運悪く神戸の大震災で死亡してしまいました。奥さんは災害割増特約に基づいて保険金を請求しましたが、保険会社は割増分を支払ってくれません。奥さんは納得がいかないようです。
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一般に、保険約款では、地震の場合、災害特約の範囲外としています。地震の場合も保障されるためには、特にその定めがある保険に加入することが必要です。
※平成23年3月11日の東日本大震災では、生命保険協会は、自身による免責条項の不適用を決定しています。
保険会社に対する経営破綻対策
保険業法では、経営破綻に陥った保険会社の場合、保険金額の削除など契約条件が変更できるようになりました。