告知義務に違反したらどうなるで見たとおり、告知義務違反は保険契約の解除になり、保険金が支払われないことになります。しかし、告知義務に違反したからといって、すべての場合に保険会社は契約を解除できるものではありません。解除の要件について見てみましょう。
告知義務違反として解除される場合
CASE1
私は、生命保険に加入する前に胃が痛かったのですが、胃腸薬を飲んだところ治ってしまいました。保険会社からは胃潰瘍について告知を求められていましたが、単なる食べ過ぎだろうと思って、それを告知しませんでした。ところが保険に加入した後に胃潰瘍と診断されました。このような場合、告知義務に違反するのでhそうか。
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告知義務違反で解除するには、告知義務者に悪意または重過失があることが必要です。
悪意 :告知すべき重要な事項であることを知っていた場合
重過失:告知すべき重要な事項であることを少し注意すれば知り得た場合
このケースでは、胃腸薬を飲んで治ってしまったのですから、悪意、重過失とはいえないと考えられます。
ただし、保険約款では、保険契約申込後、第1回保険料払込みまでに健康状態に変動があった場合、告知義務が生じると規定されているのが通常です。したがって、その期間内は告知義務があることになります。
CASE2
私は、心臓が悪くて病院に通っていました。保険会社からは心臓病について告知を求められていましたが、そのことを告知せずに生命保険に加入し、5年半保険料を支払っています。友人に聞いたら告知義務に違反するということですが、保険会社から契約を解除されてしまうのでしょうか。
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保険法および保険約款には、次の場合に保険会社の解除権が消滅し、解除できなくなると定められています。
①保険契約をした日から5年を超えて保険契約が継続した場合
②保険会社が告知義務違反で解除できることを知った日から1ヶ月以内に解除しなかったとき
③告知義務違反に基づかないで保険事故が発生したことを受取人が証明できたとき
したがって、本件の場合には保険会社は解除できないことになります。ただし、保険に加入する際、替え玉を使って医師の診査を受けた場合や、不治の病で死ぬことがわかっていたのにそのことを告げないで生命保険に加入した場合等、告知義務違反の程度が大きい場合には「詐欺」にあたりますので、保険金は一切支払われないことになります。その場合は払込済の保険料を返還されません。
告知義務違反事実に基づかないで保険事故が発生したことを受取人が証明できたとき
質問 私の父は、胃がんであることを保険会社に告知せずに1年ほど前に生命保険に加入しましたが、つい先日交通事故によって死亡してしまいました。この場合も保険金は支払われるのでしょうか。
回答 告知義務違反があれば解除できるのが原則ですが、保険事故の発生が告知された不実または不告知の事実に基づかないことが証明されたときは、保険会社は解除できず、受取人は保険金の支払いを請求することができます。ただし、告知義務違反が詐欺になる場合には、保険金は支払われません。