保険契約者以外を保険金受取人とする契約は、いわゆる他人のためにする生命保険契約です。保険金受取人を誰にするか、また契約後に変更することのいずれも自由にできます。
受取人の指定と変更について見てみましょう。
受取人の指定
・受取人を誰にするかは自由
・受取人の承諾も必要
・会社を受取人にすることもできる
・受取人は1人である必要はない
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受取人の指定方法
・具体的に受取人の氏名を表示する方法
・抽象的に「被保険者の法定相続人」と表示する方法
受取人の変更
CASE1
私は、保険金受取人を両親として生命保険に加入しましたが、結婚したので受取人を妻に変更したいと思います。
変更は自由にできるのでしょうか。手続きはどのようにしたらよいのでしょうか。
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契約者は、支払事由が発生するまでは、被保険者の同意を得て、保険会社に対する通知により、受取人を変更することができます。なお、遺言によって受取人を変更することも可能です。(保険法43条)
○変更の手続き
受取人を被保険者の同意を得て変更できるとしても、保険会社としては誰が受取人かを常にわかっていなければ、保険金をスムーズに支払うことができません。
そこで、受取人を変更する際には、保険会社が指定する名義変更請求書と保険証券を保険会社に提出することになっています。
保険会社はこの手続きが終了しない間は、旧受取人に保険金を支払えば責任を免れることになります。この場合、新受取人は、旧受取人に保険会社から支払われた保険金の引き渡しを求めなければなりません。
名義変更請求書保険証券 ⇒ 保険会社へ提出 ⇒ 保険会社は新受取人に保険金を支払う
「妻・○○」という指定の意義
たとえば、山田一郎さんが生命保険の受取人を「妻・山田花子」と指定した後で花子さんと離婚した場合、一郎さんが死亡した後で花子さんは保険金を受け取ることができるのでしょうか。実際、この問題は最高裁判所まで争われました。
この事案では離婚の原因は花子さんの不貞でしたが、最高裁はこの受取人の表示は、妻であることを受取人の条件としたものではなく、山田花子個人を特定したものであるとして、保険金の請求を認めました。受取人の変更ができたはずであるにもかかわらず、それをしなかったというのが判断の背後にありました。