生命保険の税金は、保険の種類(養老保険、定期保険、終身保険など)によってさまざまです。どの保険の税金がどのくらいかかるか、生命保険会社の方に聞き、これをメモしておきましょう。
養老保険と税金
養老保険は、①死亡保険金(死亡したとき)または②満期保険金(満期のとき)と同額の保険金を受け取ることができます。保障のほか貯蓄の機能もあります。
満期保険金を受け取ったときの税金:
・満期保険金を受け取ったときの税金については、契約者、被保険者、受取人とも本人の場合は、一時所得になります。
死亡保険金を受け取ったときの税金:
・死亡保険金を受け取ったときの税金については、契約者、被保険者が被相続人(亡くなった人)で、受取人が相続人の場合は相続税がかかります。
一時払養老保険の税金:
・一時養老保険は期間が5年以内か5年超かによって税金の取り扱いが異なります。
・期間5年以内(5年を含む)の場合は20%の源泉分離課税がかかるだけで、ほかの所得とは関係ありません(預金の利息とまったく同じ扱い)。これに対し、期間5年超の場合は一時所得となり、50万円の特別控除を差し引いた金額に2分の1をかけ、ほかの所得と合計して合計所得を出し、税金を計算します。
・当初期間5年超であっても、5年以内に解約した場合は一時所得ではなく20%(所得税15%、住民税5%)の源泉分離課税となります。この20%は最高税率の高額所得者も所得0の人も同じです。
契約者貸付金の税金:
・契約者貸付金を利用すると利息を支払わなければなりませんが、契約者貸付金を事業用に使う場合は、利息は必要経費(個人事業の場合)または損金(会社の場合)になります。
・解約または満期のときは、生命保険会社は契約者貸付金を差し引いて支払います。一時所得の額は契約者貸付金の有無に関係なく(入金の額は少なくても)同額ですが、相続税の計算上は相続財産から控除します。
定期保険と税金
定期保険は、一定期間内に死亡したときのみ保険金を受け取ります。満期保険金はなく、保険料は掛け捨てです。
死亡保険金を受け取ったときの税金:
契約者、被保険者が被相続人(亡くなった人)で、受取人が相続人の場合は相続税がかかります。
解約返戻金を受け取ったときの税金:
契約者、被保険者、受取人とも本人の場合は、一時所得になります。
○期間内に生きているか亡くなっているかによる保険、貯蓄、消費の比較
保険は万が一のときに損失をできるだけ少なくするものです。保険に入った場合と、その分預金した場合と、その分使った(消費した)場合で、保険期間に生きているか亡くなったかによる概算的な比較をしてみました。
保険に入る前の財産は現金500万円、土地建物1億5,000万円、保険金の最終日に亡くなり、相続人はこども2人です。定期保険(期間10年間、保険金3,000万円、保険料月1万円)、預金(月1万円)、消費(月1万円)のケースを示します。
生きている場合 | 亡くなった場合 | |
---|---|---|
保険 | ・保険料120万円(ー場合により生命保険料控除)財産が減少します。 ・財産は現金380万円、土地建物1億5,000万円、合計1億5,380万円です。 |
・3,000万円保険金をもらいます。 ・相続税が1,714万円かかり、相続税納付後の財産は現金1,666万円、土地建物1億5,000万円、合計1億6,666万円です。 |
預金 | ・預金120万円の場合、その利息約10万円(20%の源泉税控除後)財産が増加します。 ・財産は現金380万円、預金130万円、土地建物1億5,000万円、合計1億5,510万円です。 |
・相続税が1,302万円かかりますが、現金が510万円なので、差額792万円が不足します。財産は預金0円、土地建物1億5,000万円、未払い相続税792万円の合計1億4,208万円になります。 ・土地建物を物納するか、土地建物を売却するか、延納(毎年相続税を分割して納めていく)により税金を納めるしかありません。土地建物を売却した場合には、相続税とは別に所得税と住民税がかかります。 |
消費 | ・消費120万円。財産が減少します。 ・財産は現金380万円、土地建物1億5,000万円、合計1億5,380万円です。 |
・相続税が1,276万円かかりますが、現金が380万円なので、差額896万円が不足します。 ・財産は現金0円、土地建物1億5,000万円、未払い相続税896万円の合計1億4,104万円になります。そのほかは預金の場合と同様です。 |
※平成25年度の税制改正により、相続税の基礎控除が縮小されたため、平成27年1月1日以後の相続では、表中の金額よりもさらに相続税額が増えることになります。
終身保険、貯蓄保険、変額保険と税金
説明 | 生命保険料控除 | 死亡保険金の税金 | 満期保険金の税金 | |
---|---|---|---|---|
終身保険 | 被保険者が亡くなったときのみ保険金が受け取れます。誰が被保険者か、誰が受取人かによって税金の取り扱いが異なります。 | 支払時に控除 | 死亡保険金の税金参照 | |
貯蓄保険 | 満期時に満期保険金、保険期間内に死亡の場合は保険料合計額が死亡保険金としてもらえます。ほかの保険は年齢が上がるにつれて保険料が上がりますが、貯蓄保険の保険料は同額です。 | 死亡保険金の税金参照 | 生命保険の満期でかかる税金参照 | |
変額保険 | 死亡時に基本保険金+変動保険金(最低0)がもらえる保険。保険料の支払方法は月払いまたは一時払い、保険期間のある有期とない終身があります。 | 死亡保険金の税金参照 | 一時所得×1/2が20万円までは確定申告不必要 | 生命保険会社から損害保証金を受け取った場合、税金はかからない |
こども保険と税金
○満期保険金の税金
祝い金、満期保険金から保険料を控除した額が一時所得として課税されます。ただし、特別控除の50万円以内であれば非課税のため、祝い金が一時所得になることは少ないでしょう。
受取人に判断能力があれば、贈与できます。祝い金、満期保険金をこどもに贈与した場合は贈与税の対象となります。年間110万円を超える贈与を受けた場合は、贈与税がかかります。
○親が死亡した場合の税金
親が死亡したとき、こども保険も相続財産とみなされます。こども保険の評価額は祝い金、満期保険金の評価額と養育年金の受給権の評価額との合計です。
20歳未満のこどもが相続により財産を取得した場合は、そのこどもの年齢に応じて相続税が少なくなります(未成年者控除)。逆に、こどもが死亡して親が保険金を受け取ったときは一時所得となります。
財形保険と税金
財形保険は、勤労者の住宅取得と老後の準備を税制面から支援する制度です。勤務先に財形制度のある人のみ利用可能です。財形保険は、生命保険会社のほか、損害保険会社、銀行などが扱っています。生命保険会社の場合は住宅資金の準備や老後の準備という財形本来の目的以外に、生命保険が付随しています。
財 形 保 険 |
財形貯蓄積立保険 | 満期時 | (満期保険金+積立配当金ー保険料累計額)×20%の税金 | |
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途中死亡時 | 災害死亡以外 | 積立配当金×20%の税金 | ||
災害死亡 | 死亡保険金=相続財産 | |||
財形住宅貯蓄積立保険 | 元本550万円までの利息は非課税。住宅以外の目的で引き出すと、差益の20%の源泉分離課税。 | |||
財形年金保険 | 年 金 支 払 前 |
死亡保障 | ・保険料累計額385万円の利息は非課税 ・保険料払込期間中の解約(返戻金ー払込保険料ー50万円の特別控除)×50%が一時所得として課税 |
|
財形年金積立保険 | 災害保障 | ・保険料累計額385万円の利息は非課税 ・保険料払込期間中の解約(返戻金ー払込保険料ー50万円の特別控除)×50%が一時所得として課税 ・災害死亡の死亡保険金は相続財産 |
※保険料は生命保険料控除の対象とならない。退社時に解約しなければならない。
医療費控除
医療費控除は所得控除の1つで、所得から控除してこれに税率をかけます。医療費控除は年末調整ではできないため、確定申告をする必要があります。
支払った医療費:本人、本人と生計をともにする配偶者、親族の医療費
ー 保険金により補填される部分:確定申告までに保険金額が決まらないときは見積もりで計算。判明後に修正
ー 10万円または総所得の5%:総所得金額200万円未満の場合、総所得金額の5%
= 医療費控除額:所得のある人は、200万円まで控除される
※身体障害者に対しては、障害者控除(27万円)または、特別障害者控除(40万円)が受けられる。
人間ドックの費用は、どうなるの?
人間ドック(健康診断)の費用は医療費控除の対象にはなりません。ただし、人間ドックの結果よくない箇所が見つかって治療が行われたときには、その治療費とともに人間ドックの費用も医療費控除の対象となります。